1.NBDCヒトデータベースの目的と意義は?

 様々なプロジェクトから産出されたデータを多角的な視点で捉えることで、新たな知見を得られる可能性があります。特にヒト由来データの場合、病気の発症や進展に関与する因子を探索し、創薬等治療に向けた新たな知見につながる可能性や、少子高齢社会を乗り切るための健康長寿社会の実現に向けた取り組みにつながる効果的な要因の発見に繋がる可能性があります。また、そういった研究・解析を実施するための研究資金には限りがあるため、効率的にデータを産出し、それらのデータの散逸を防ぐことで最大限に活用する必要があります。しかし、これまで日本には公的資金を使用して実施された研究から産出された多くの貴重なヒトに関するデータを一元管理するデータベースは存在せず、プロジェクトの終了と共にデータが散逸してしまったケースが少なくありませんでした。一方、世界的に、研究の効率化や論文の検証のためのオープンサイエンス・オープンデータの声も高まってきています。そのような潮流の中、国内においても研究データを共有するための公的データベースの構築が必須となりました。一方で、ヒトに関するデータは付随情報によって個人が特定されてしまう可能性があります。そのため、そのような機微情報を扱うためのセキュリティ環境や体制を整える必要があります。基礎医学研究や臨床研究、ゲノムコホート研究など、ヒト由来試料を用いた研究から産出されるデータ(ヒトデータ)は、次世代シークエンサーをはじめとした解析技術の飛躍的な進歩に伴い、膨大かつ多様になってきています。それらのヒトデータを整理すると共にセキュアに保管し、国内外、民間利用を問わず広く研究に活用し、生命科学の進展や公衆衛生の向上のために有効に活用していくためのシステムが必要です。

 ROIS-DS DBCLSでは、個人情報の保護や倫理的側面に配慮しつつ、ヒトの個人毎のデータ(個別データ)を様々な切り口から解析することで、上述の目的のためにデータを最大限に活用できるよう、ヒトデータを共有するためのプラットフォーム(以下、『NBDCヒトデータベース』)を運用しています。また、データベースの運用ルールとして、ガイドライン(NBDCヒトデータ共有ガイドライン及びNBDCヒトデータ取扱いセキュリティガイドライン)を策定しています。ガイドラインの改定にあたっては、ヒト由来試料を用いた研究を実施する上で準拠すべき『人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針』を基礎とし、海外におけるデータ共有方針との整合性の観点から、米国国立衛生研究所(National Institute of Health: NIH)や欧州分子生物研究所(European Molecular Biology Laboratory- European Bioinformatics Institute: EMBL-EBI)、英国Wellcome Trust等で示されているデータ共有ポリシーを参照しています。

 

2.NBDCヒトデータベースで扱うデータの種類は?

 ヒト試料を用いた解析データ全般(塩基配列情報、変異データ、遺伝子発現アレイデータ、生化学検査値、臨床情報、質問票、心理検査、画像データ、音声データ、コホート研究から継続的に産出されるデータ等)を対象としております。データの詳細は、各研究の専用ページをご参照ください。

 

3.NBDCヒトデータベースに登録されているデータを利用できる者の範囲は?

 NBDCヒトデータベースには、データへのアクセスに制限を設けることなく誰でも利用することが可能な公開データ(非制限公開データ)と、ヒトデータ審査委員会による審査(利用者要件を満たすか、セキュリティ環境は整っているか等に関する審査)及び承認を受けた者のみが利用することが可能な公開データ(制限公開データ)の2種類があります。制限公開データの利用者情報(研究代表者氏名、所属機関、国・州名、研究題目、利用データのID、利用期間)は、各研究内容のページに掲載されます。

 

4.NBDCヒトデータベースの責任者は?

情報・システム研究機構データサイエンス共同利用(ROIS-DS)ライフサイエンス統合データベースセンター(DBCLS)五斗 進 です。お問い合わせにつきましてはこちらからお願いします。